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2008年には病理検査について制度面の変革が相次いだ。病理検査に関する診療報酬改定と病理診断科の標榜診療科入りである。それまでは病理学的検査は医療関連サービスの対象である検体検査に入っているため、病理診断が医療機関から検査所等に外注されていることがある。
2008年4月の診療報酬改定で、それまでは第3部検査にあった病理学的検査は第13部に移り、名称も病理診断に変更された。病理組織顕微鏡検査は病理標本作製料に変更され第13部病理診断に含まれている。
改定前は「病理学的検査」には二つの意味があった。(以下「①病理学的検査」「②病理学的検査」とする)ひとつは臨床検査技師等に関する法律にある「①病理学的検査」である。「①病理学的検査」の内容は臨床検査技師等による病理標本作成・細胞診検査や判定等が想定されており、医行為には属さないものに限定されている。医行為を含まないので、営利企業である登録衛生検査所による検査の受託が可能となっている。もうひとつは診療報酬点数表上での「②病理学的検査」である。「②病理学的検査」は、患者さんや支払い側から見た場合の病理細胞診検査の名称であり、医科(歯科)診療報酬のなかで、第3部検査の1項目である。臨床検査技師等による①の部分(標本作製や細胞診スクリーニング・判定等)と病変の判断という医師による医行為が含まれている。
法律と公的資料に別々に「病理学的検査」という同じ文言が用いられ、定義が2重であったために、臨床検査技師と病理医の間で業務の入れ子やコンフリクトが生じるなどの不具合が生じていた。また「①病理学的検査」受託を営業する登録衛生検査所に対して、医療機関から「②病理学的検査」が外注することができたために、登録衛生検査所を経由して医行為である病変の判断が、なかば公然と行われてきた。病理専門医や細胞診専門医も、衛生検査所にある「②病理学的検査」の診断部分を請負い、サイドビジネスとして収入を得ており問題が表面化しにくかったと考えられる。登録衛生検査所での病理学的検査は営利に非営利が共存するという事態であった。第13部病理診断の中には病理標本作製料と病理診断料・判断料が含まれているので、登録衛生検査所への病理学的検査外注における非営利の取扱いについては、病理診断サービスの充実を前提として今後整備されていくものと考えられる。
2008年3月には病理診断科が標榜診療科として認められた。病理診断・細胞診断を医師が行う医行為として医療法で定義されたという画期的なできごとである。検査と診断の入れ子が解消され、技師と医師による協調(チーム医療)を描くことができる下地ができた。当然、病理専門医・細胞診専門医は自ら行った病理診断・細胞診断について、医療機関外でのサイドビジネスではなく本業(病理診断科での医業)として、すべての責任を持つことになる。これらの制度変更は、病理診断の重要性が認識された結果であると考えたい。日本病理学会等が果たした役割は大きい。関連団体を束ね、新しい病理診断サービス体系を実現することも日本病理学会の責務となった(日本病理学会 診療標榜科名「病理診断科」と診療報酬改定「第2章第13部 病理診断」の実現を受けて 08/04/08 )。
がん検診・がん診断に病理診断は必須である。生検材料や摘出された臓器の病理診断に基づいてその後のがん治療方法が選択される。また細胞診は病変部診断にも応用されるようになり細胞診報告書に病名が記載され医行為となっている。このような病理学進歩や役割変更に合わせた「標榜診療科」であり「第13部病理診断」である。さらに医療費内容を説明する医科(歯科)診療報酬領収書の例には病理診断の項が追加された(保発第0305002号)。
診療所や病理検査室のない医療施設で病理診断が行われた場合、診断を担当した病理医には診療報酬の評価がない。病理診断においては、必ずしも患者さんに面談しての診察・治療などの医行為がないために、現行の診療報酬制度では「診療」報酬を支払うことができないとされているからである。見方を変えれば診療報酬が評価されない病理診断が存在しているということである。診療報酬評価の仕組みに合った病理診断サービスの開発とともに、診療報酬制度見直しや診療報酬点数改正での議論に期待が寄せられている。
日本病理学会や日本臨床細胞学会は学術団体ではあるが、病理専門医・細胞診専門医の認定機関であるがゆえに、職能団体でもあることはまぎれもない事実である。病理診断・細胞診断に関連した各団体においては、病理検査室がない医療施設(開業医など)で採取された病理学的検査検体の標本作製や病理診断・細胞診断について体制をどのように整備するかが緊急の課題となっている。また新しい病理診断サービスや責任に見合う診療報酬を要求し実現することも大きな課題である。病理医の医行為を診療報酬で評価いただくことは診断する場所や保険医であることなど病理医側条件を整備することでもある。
診療報酬の整備と病理診断科により病理専門医が増えることを期待したい。がん予防、がん診断・登録などを通じて地域医療に貢献するようになると、医療の質的向上が期待できるのである。いっぽう、登録衛生検査所が行うことができる①病理学的検査に②の医行為(病変の判断)が含まれなくなり、病理標本作製・細胞診や検査と判定という臨床検査技師等による検査業務が再定義されることにより、企業としての事業性が向上するというメリットがある。
このように、医療の質的向上、病理診断科、診療報酬での検査からの病理診断の独立、非営利分離による衛生検査所の事業性向上はそれぞれが関連している。